当寺の開創については不明な点が多いが町史の記事を要約すれば次のようになる。
「大慈山報恩寺は京都府般井郡玉雲寺の法系に属す。報恩寺蔵の系譜によると、登米町寺池、大白山永明寺六世、渓室永曹和尚の開山となり、応仁元年(一四六七)の建立である。
ただし、資料によって建立の時期が異なっている。前述したものは登米郡史で、県史(巻十二)によると、天正年中(一五七三〜一五九一)の建立とあり、玉雲寺七世、廬月禅林和尚勧請開山となっている。
これらのことで共通しているのは、玉雲寺が本寺あるいは大本寺にあたるということである。当時、建立については、開山渓室永曹和尚の示寂の時期を考えあわせると、永明寺六世ということはありえない。なぜなら享禄年中(一五五八〜六九)同五世日峰天輪の代で廃寺になっているからである。これらのことから、開山渓室永曹は玉雲寺六世であり、建立は応仁元年と考えることができる。」
歴代の住職は、
開山 | 渓室永曹大和尚 | (文明十年四月五日) |
二世 | 交天寿泰大和尚 | (文明七年十一月一日) |
三世 | 可心曹鍼大和尚 | (明応二年九月七日) |
四世 | 中興巧国曹全大和尚 | (宝永五年四月二十四日) |
五世 | 空巌宅心大和尚 | (元文三年六月二十日) |
六世 | 大道魯恭大和尚 | (宝暦元年三月十日) |
七世 | 天産燈外大和尚 | (宝暦二年三月一日) |
八世 | 鉄門玄随大和尚 | (明和四年九月十日) |
九世 | 円契瑞頂大和尚 | (安永八年八月十七日) |
十世 | 鉄苗智昌大和尚 | (文化四年五月六日) |
十一世 | 得水玉龍大和尚 | (文化五年九月二十五日) |
十二世 | 興山祖鷲大和尚 | |
十三世 | 大雄仙峯大和尚 | (寛政六年四月二十二日) |
十四世 | 萬松天嶺大和尚 | (文政三年四月二十五日) |
十五世 | 良禅楚雄大和尚 | (天保三年五月十八日) |
十六世 | 悟宝曇嶺大和尚 | |
十七世 | 泰淳実道大和尚 | (天保五年六月六日) |
十八世 | 地蔵東水大和尚 | |
十九世 | 斉隠匡道大和尚 | |
二十世 | 覚田卍龍大和尚 | |
二十一世 | 祖岳大童大和尚 | (明治二十七年一月二十七日) |
二十二世 | 梅琳智芳大和尚 | (大正十年九月二十二日) |
二十三世 | 円心徳成大和尚 | (昭和十年八月十三日) |
二十四世 | 泰嶽宗胤大和尚 | (昭和四十一年二月十二日) |
二十五世 | 大光徳孝で、現在に至る。ただし、三世と四世の空白期間が約二百年ある。記録が紛失しているので、推定でしかないが、この間は無住であったと考えられる。 |
寺内の建立物は、本堂(二十世代に造作、その後、何度かの改修)、庫裡(昭和五十二年新築)山門(二十世代に新造)、鐘楼堂(平成十二年改築)がある。
そして、鐘楼堂の隣にある、観音像、並びに地蔵様は、平成四年に寄付、建立されたものである。碑文には、各菩薩の由来が説明されている。例えば、観音様の場合は、
「聖観世音菩薩、この観音様の御名は、南無大慈大悲救苦観世音菩薩と申し上げます。私達の自己滅罪のために慈悲なる菩薩として、現世と来世の両界にわたり救いを求める者の姿に応じて現れて下さる佛さまであります。ご真言「オンアロリキャソワカ」を三回唱えれば三毒を消し、身体で拝すれば衆生の救いの声を聞き届けて病気にならない。常に佛に守られ、財物が欠乏しない、怨敵を打ち破る、一切の衆生に慈悲の心を起こさせ、臨終の望み十方の佛に守られ永遠に地獄に落ちることがない延命長寿の御利益があり極楽に往生することができるありがたい菩薩であります。」
と、ある。地蔵様も同様で、参拝する人たちの目を引いている。
報恩寺宝物として挙げられる物には、
一、本尊(木像)曹洞宗 本尊釈迦牟尼仏
一、脇仏(木像)二体
一、承陽大師(木像)
一、開山和尚(木像)
一、達磨大師(木像)
一、大権菩薩(木像)
一、中興開山(木像)
一、秋葉山像(木像、これのみ立像)
一、十王像(木像)九体
一、地蔵小像(木像)
一、内仏安置地蔵小像(木像)
一、涅槃画像(軸物紙地)一幅
一、拾六善神(軸物紙地)一幅
一、地獄画(軸物紙地)四幅 がある。
事業としては、墓地区画整理を昭和四十五年十二月に着工し、同四十七年七月に完成させている。
今、寺院の運営、管理に専念するのが主たる状態で、特に事業と言えることは行っていないが、平成十二年には檀信徒の皆様方の善意のお陰で、鐘楼堂を新たに建立することができた。その気持ちに応えるために、毎朝、精進して鐘をついている。鐘の音が伝える響きは、人々の心をなごませ、荘厳な心持ちにさせてくれる、と思う。そうして伝わる心がもっと、もっと広がり、つながっていけばいいと思っている。これこそが、今の自分にできる教化活動なのである。
(2010年04月10日 投稿)